ここでは主に、開発日記を翻訳してくださっているSimulationianさんから、開発チームの発言を引用することを基本にして説明したい。
Victoria 3とはなにか? まずお伝えしたいのは、これは間違いなく正統なVictoriaのゲームだということだ。すなわち、経済・政治・国内の管理に主に注目したゲームであり、象徴的なVictoriaのPopシステムが中核的機能として含まれるのみならず、過去作よりも深化している。
Victoria 3は固有のゲームであってVictoria 2の焼き直しではないが、私たちの目標は、Victoriaシリーズの本質的価値に忠実でありながらもゲームをよりわかりやすいものにすることに関してここ10年で学んできたことを活用し、価値ある後継作を作ることだ。昔からのプレイヤーにとって新たなプレイヤーにとっても同様に深みのあるゲームを作るために、私たちはそうしたわかりやすさを利用し得る。
Victoria 3に対する私たちのビジョンは私たちが「社会シム(Society Sim)」と呼ぶものを作ることだ。すなわち、なによりもまずプレイヤーが遊んでいる19世紀の国家の内部の仕組みと、ゲーム中にその社会がどのように形作られるかについてのゲームを作るということだ。政治・経済・外交がこのゲームの最重要の3要素であり、戦争はもちろんゲームに含まれる(まさしくヴィクトリア朝時代の一部だったように)が、Victoria 3は戦争ゲームやマップの塗り絵をするゲームではない。
#0ビジョンより
2010年に発売された前作Victoria2が12年の時を経て、深化した経済システム、柔軟なゲームシナリオ、それから洗練されたUXを携えて帰ってきた!(なお筆者はVic2未プレイ)
Victoria3は、1836年から1936年までの100年間、すなわち"Victorian Era"を舞台にしたゲームである。ほかのパラドゲーの例にもれず歴史をなぞるゲーム進行を重視し、さらには世界地図のうえで当時の国家、社会、人々が丁寧に描き出されている。
ヴィクトリアの時代とはいかなる時代であったか?戦後の反動で展開されたウィーン体制はほどなくして崩壊し、イタリアやドイツが新たな地域大国としてのし上がってきた。英米の圧力によって清や日本は貿易の開放を余儀なくされた。世界中の多くの植民地でより直接的な統治が取られるようになったのもこの時代であり、またキニーネの発明によってアフリカの内陸まで分割されるようになった。
このゲームは、マップ上に色が塗られているすべての国でプレイ可能である。チュートリアルでさえすべての国で始めることができる。そして国を選んだあと、何を目指していくのかも自由である。史実の道筋をなぞってもいいし、強欲に植民地の総取りを狙ってもいい。国民全員が億万長者のような狂ったユートピアを作っても、無政府主義国家の建設を宣言してもいい。
しかし、思った通りに国が動いていくとは限らない。このゲームにおいて、主役はプレイヤーだけではないのだ。
世界のあらゆる場所に住むPOPたち、彼らもまた主役なのである。
国家のあらゆる動きに対して、POPたちはそれぞれ反応し、行動を起こす。プレイヤーの意図通りに動いてくれるときもあれば、そうでないときもあるだろう。結局のところ国家の運命は彼らがどう動いたかで決まる。国家をコントロールすることは、すなわちPOPの動きを理解することなのである。
このゲームのシステムは複雑で、様々な要素が互いに影響しあってゲームを構築している。ひとつの些細な変化が別の場所で大変動を引き起こすこともありうる。
例えば、あなたが自国の織物工場を拡大し、絹織物をいくらか増産したとしよう。大抵のゲームでは、人々が絹織物を欲しがっていたので、増えた織物分の幸福度が増加しました!となる。しかしVictoria3のシステムはそうではない。絹織物を増産すると、まず自国市場の絹織物の価格が下がる。貴族など上流階級の人々は高級品を常にある程度求めているので、価格の減少に伴って高級品への支出が減り、貴族たちの富が蓄積されるようになる。富が蓄積されると彼らの生活水準が上がり、貴族たちは国家や政府を支持するようになる。これがVictoria3のゲーム体験である。
複雑さはこのゲームと切っても切り離せないが、情報をわかりやすく提供することもまたこのゲームの特徴である。人々はどこで何をして、何を消費し、何を望んでいるのか。現在不足している商品は何で、どうすれば手に入るのか。ゲーム内での動きはみな即座に確認でき、独自のチュートリアルシステムにより問題への解決方法まで提示してくれる。プレイヤーのゲーム体験について、開発チームはこのように言っている。
「私たちの最終目標はゲームをより親しみやすくアクセスしやすくすることであり、より深くより複雑なものにできるようにすることだ。複雑さとはどこになにがあるのか、なぜそうなったのかがわからないことではなく、ゲームの中核である深いシミュレーションとゲームの仕組みから生まれるものであるべきだ。情報や行動にアクセスしやすいほど、その情報や行動をより複雑なものにできる。」
#29ユーザー体験より
#0 ビジョン
#29 ユーザー体験
#30 ユーザーインターフェース
#51 チュートリアル
前提
・すべての商品には単位当たりの基礎価格があり、需給によって±75%の価格にまで増減する。例えば木材 1つの基礎価格は20£であり、最大35£、最小5£まで変化する場合がある
・あらゆる国家はいずれかの市場に属する。例えばブラジルはブラジル市場(ブラジルのみで構成された市場)、イギリスはイギリス市場(カナダ、英領インドなども含む市場)に属する。市場の中で生産された商品は、同じく市場の中の需要の大きさによって価格が決まる。つまり、商品の価格はそれぞれの市場によってばらばらである。
貿易
・A国からB国に、木材を輸出するとする。
・A国の中で、あらゆる貿易路を絶ったと仮定したときの価格、つまり純粋な市場の中での需給で決まる価格を(A国の)貿易前価格とする。また、輸出したい数を減らして需給を再計算したときの価格を(A国の)貿易後価格とする。
・そして、A国の貿易前価格と貿易後価格の中間値を購入価格とする。
・同様にB国の中で、純粋な市場のなかの価格を(B国の)貿易前価格、輸入した後の価格を貿易後価格とし、B国の貿易前価格と貿易後価格を中間値を販売価格とする。
・販売価格 ー 購入価格 = 利益 であり、この利益が拡大する見込みがあるなら、貿易路のレベルが上昇して扱う商品の数量が増加する。
・A国の木材の貿易前価格が20£、貿易後価格が10£とすると、購入価格は15£となる。B国での販売価格が25£とすると、利益は10となる。レベルが上がって取り扱う数量が増加してもまだ利益が見込めるなら、この木材貿易は拡大する。
ここまでは単純な需給と利益の話。実際にはさらに関税が加わってくる。
関税
・関税は輸出側と輸入側の双方でかかる可能性がある。
・税率は商品の価格に依存するが、市場内価格ではなく商品の基礎価格への割合で関税額が決まる。それによって貿易に対する強烈な障壁を作ることができる。
・木材の輸入関税が25%の場合、実際の関税額は常に5£となる。上記の例の場合、もとの利益は10£なので、関税によって利益が半減することになる。
・貿易がさらに拡大した場合、輸出国内の商品が減って輸入国内の商品が増えるため、購入価格と販売価格の差が小さくなる。すると利益も小さくなり、貿易路のレベルは頭打ちになる。収益性が悪化すると貿易は縮小していくが、その間国家としてはこの貿易から関税による大きな収入をあげられる。
・国家の関税率は、主に「貿易政策」の法律によって決定される。例えば「保護主義」法は、輸出入のどちらにも20%の関税がかかる。
・さらに個別の商品ごとに、輸出あるいは輸入関税を撤廃することもできる
政治運動(Political Movement)は、平たく言えばPOPが政府に直接要求を行う手段である。その動機は、彼らが変化を望んでいるか、プレイヤーが現在進めている変化を望まないかのどちらかだ。
政治運動には以下の3つの形態がある。
政治運動は単一の目標をもち、目標が達成されるまで存在し続ける。
支持(Support)の値は、人々がこの政治運動をどれだけ積極的に推進しているのかをあらわす。
政治運動は利益集団(運動を支持する政治集団の一部を表現している)と個々のPOP(街頭でその運動の擁護を表明する人々を表現している)の両方から支持を集めることができる。
利益集団はその勢力に基づいて政治運動に支持をもたらすが、POPは国民全体と比較した生の人数によって支持をもたらす。これはつまり、一人の差別された労働者がもたらす支持は、完全な選挙権を持つ貴族が利益集団の外で意思表示をするときの支持と同程度であるということだ。
言い換えると、政治運動において政治力(Political Strength)は依然として重要な役割を担う(利益集団は彼らが望む法律を擁護する運動に、勢力による影響を与えるという形で)が、政治運動がどの政治運動にも支持されずに形成されることは十分あり得る。たとえどの権力者たちも労働者の権利を擁護する気がなかったとしても、街中に怒れる労働者たちが十分いれば、どちらにせよ法律の変更に影響を与えるには十分だろう。
どの利益集団が政治運動を支持し、あるいは支持しないのかは、彼らが新たな法律への変更を承認するか(制定/回復運動の場合)、現在進行中の変更を承認しないか(擁護運動の場合)に基づいている。これは利益集団のイデオロギーや、その指導者のイデオロギーによって決まり、利益集団のイデオロギーは大抵の場合ゲームを通して変化が少ないが、指導者のイデオロギーは時代とともに変化していく。
政府への高い評価(Approval)を持っていたり、政府の一部となっていたりする利益集団は政治運動に参加しないが、政府内の利益集団がプレイヤーの行動に満足していない場合、別の方法で圧力をかけることがある。*1
POPが政治運動を支持するメカニズムはより複雑である。POP自身の政治運動と一致している(例えば参加している政治集団が好む運動と同じ)とき、またはその運動によって直接利益を得られる(例えば差別されているPOPがより多くの権利を得られる法律を支持する)ときのいずれかが理由で政治運動を支持しうる。
支持の値は法律の制定に二つの直接的な影響をもたらす。まず、法律が成功裏に成立する可能性に影響する。制定/回復運動の場合は法律が通過しやすくなり、擁護運動の場合は通過しにくくなる。制定/回復運動があることで、政府内の利益集団の支持がなくても、国は運動が望む法律の通過を試みることができる。
あなたが自国の政治運動の意向に屈する気がないとしたら?そのときは政治運動のもう一つのパラメータ、急進性(Radicalism)の出番だ。急進性の大きさは、運動を支持する急進派(Radicals)のPOPの数と、同じく支持する憤激した(Angryの評価を持った)利益集団の勢力に基づいている。
急進性の低い運動は請願を聞き入れてもらうため平和的な方法を使うことに尽力するが、高い急進性を持つ運動はより過激な手段を用いるし、革命(Revolution)にまで発展する場合もある。
平和的な運動がすべて急進的になるとは決して言えないし、運動が目的を達成せずに消えてしまうことも大いにあり得る。とはいえ、自国の人口や政治勢力の大部分の意向を無視すれば、それなりのリスクを負うことになる。
運動を支持する急進派のPOPの数は急進性に直接影響を与えるが、その数は利益集団の評価をも左右するので、間接的にも急進性を引き上げる原因になる。
急進派のPOPが生まれる原因はいくつかあるが、基本的には生活水準の低下や差別を受けていることが問題となる。建造物の取り壊しや生産方式を大規模に転換するときは、失業者が大量に生まれたりしないかを気に掛ける必要がある。
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