Victoria3が発表された2021年5月22日から現在(2022年7月9日)までに、すでに52もの開発日記が公開されました。あいにく8月末までは毎年恒例パラド社の長い夏休みのおかげで開発日記や新情報が出ないので、いい機会ということでこれまでの情報をまとめてみました。開発日記やマンスリーアップデート動画には一通り目を通したつもりですが、間違いがあれば指摘や修正お願いします。
ここでは主に、開発日記を翻訳してくださっているSimulationianさんから、開発チームの発言を引用することを基本にして説明したい。
Victoria 3とはなにか? まずお伝えしたいのは、これは間違いなく正統なVictoriaのゲームだということだ。 すなわち、経済・政治・国内の管理に主に注目したゲームであり、 象徴的なVictoriaのPopシステムが中核的機能として含まれるのみならず、過去作よりも深化している。 Victoria 3は固有のゲームであってVictoria 2の焼き直しではないが、 私たちの目標は、Victoriaシリーズの本質的価値に忠実でありながらもゲームをよりわかりやすいものにすることに関して ここ10年で学んできたことを活用し、価値ある後継作を作ることだ。 昔からのプレイヤーにとって新たなプレイヤーにとっても同様に深みのあるゲームを作るために、 私たちはそうしたわかりやすさを利用し得る。 Victoria 3に対する私たちのビジョンは私たちが「社会シム(Society Sim)」と呼ぶものを作ることだ。 すなわち、なによりもまずプレイヤーが遊んでいる19世紀の国家の内部の仕組みと、「ゲーム中にその社会がどのように形作られるか」についてのゲームを作るということだ。 政治・経済・外交がこのゲームの最重要の3要素であり、戦争はもちろんゲームに含まれる(まさしくヴィクトリア朝時代の一部だったように)が、Victoria 3は戦争ゲームやマップの塗り絵をするゲームではない。 #0ビジョンより、一部改変
2010年に発売された前作Victoria2が12年の時を経て、深化した経済システム、柔軟なゲームシナリオ、それから洗練されたUXを携えて帰ってきた!(なお筆者はVic2未プレイ)
Victoria3は、1836年から1936年までの100年間、すなわち"Victorian Era"を舞台にしたゲームである。ほかのパラドゲーの例にもれず歴史をなぞるゲーム進行を重視し、さらには世界地図のうえで当時の国家、社会、人々が丁寧に描き出されている。
ヴィクトリアの時代とはいかなる時代であったか?戦後の反動で展開されたウィーン体制はほどなくして崩壊し、イタリアやドイツが新たな地域大国としてのし上がってきた。英米の圧力によって清や日本は貿易の開放を余儀なくされた。世界中の多くの植民地でより直接的な統治が取られるようになったのもこの時代であり、またキニーネの発明によってアフリカの内陸まで分割されるようになった。
このゲームは、マップ上に色が塗られているすべての国でプレイ可能である。チュートリアルでさえすべての国で始めることができる。そして国を選んだあと、何を目指していくのかも自由である。史実の道筋をなぞってもいいし、強欲に植民地の総取りを狙ってもいい。国民全員が億万長者のような狂ったユートピアを作っても、無政府主義国家の建設を宣言してもいい。
しかし、思った通りに国が動いていくとは限らない。このゲームにおいて、主役はプレイヤーだけではないのだ。
世界のあらゆる場所に住むPOPたち、彼らもまた主役なのである。
国家のあらゆる動きに対して、POPたちはそれぞれ反応し、行動を起こす。プレイヤーの意図通りに動いてくれるときもあれば、そうでないときもあるだろう。結局のところ国家の運命は彼らがどう動いたかで決まる。国家をコントロールすることは、すなわちPOPの動きを理解することなのである。
このゲームはあらゆる要素が互いに影響しあっているため、システムが非常に複雑である。とはいえ心配することはない。ゲーム内での動きはみな即座に確認でき、問題への解決方法まで提示してくれる。プレイヤーのゲーム体験について、開発チームはこのように言っている。
「私たちの最終目標はゲームをより親しみやすくアクセスしやすくすることであり、より深くより複雑なものにできるようにすることだ。複雑さとはどこになにがあるのか、なぜそうなったのかがわからないことではなく、ゲームの中核である深いシミュレーションとゲームの仕組みから生まれるものであるべきだ。情報や行動にアクセスしやすいほど、その情報や行動をより複雑なものにできる。」 #29ユーザー体験より
開発日記
#0 ビジョン
#29 ユーザー体験
#30 ユーザーインターフェース
#51 チュートリアル
Vic3ではPopは国家のエンジンだ。産業に従事し、税金を納め、政府機関を運営し、戦争を戦う。彼らは生まれ、死に、転職し、移住する。また組織を作り、怒り、革命を始める。 #1 Pop より
この時代の世界に存在するあらゆる人口は、すべてPOPとして表現されている。POPとは、住んでいるステート、働いている施設と職業、文化、宗教のすべてにおいて共通している人々の集団のことである。そのため、各POPを構成する人口はまちまちである。POPの中には労働人口(Workforce)と扶養家族(Dependents)が含まれており、労働法が変わることによってこれらの内訳は変化する。
POPは自らの利益を獲得するために、自律的に行動する。彼らは食料、衣類、燃料などの生活必需品だけでなく、ワインやアヘン、自家用車なども欲しがるかもしれない。
Vic3では高給取りのPopが本質的に賃金の低いPopよりも価値の高い社会的機能を果たしているわけではない。それぞれが生産方式の「レシピ」の重要な部分として振る舞っているのだ。それぞれの役割には効果を受ける他者が必要だ。石炭を掘る作業員が充分いなければ機械工が整備するエンジンは休眠状態となり、ミシンを動かす仕立屋がいなければ商店主が売る服がない。#11 雇用と資格より
Vic3において、職業は以下の15種類がある。
学者(Academics)・貴族(Aristcrats)・官僚(Bureaucrats)・資本家(Capitalists)・聖職者(Clegymen)・事務員(Clerks)・技術者(Engineers)・農民(Farmers)・作業員(Laborers)・機械工(Machinists)・将校(Officers)・小農民(Peasants)・兵士(Servicemen)・商店主(Shopkeepers)・奴隷(Slaves)
先進国ではない多くの国では、人口の大部分が自給農場(Subsistence Farms)で働く農民として存在している。建造物を新たに建設することで、POPは次々に転職してくれるだろう。
とはいえ、あらゆるPOPがあらゆる職業に就けるわけではない。自給自足の生活をしていた農民が、ある日突然大工場を所有する資本家になったりはしない。職業に就ける資格は、教育水準と社会的地位、それから富(≒生活水準)によって決まる。技術者になるには高度な教育が必要だし、貴族になるには地位と富を持っていることが重要だ。
Victoria2とは違って、POPの職業がひとりでに変わったりはしない。建造物とその生産方式(後述)が雇用する職業を規定し、資格をみたすPOPは労働需要に沿う形で職業が決定されていく。ほとんどの建造物では複数の職業のPOPが必要であり、POPたちが資格を満たせそうにない建造物を建てることはやめるべきだ。
私たちの目的は奴隷制の制度・システム・原因のみならず、奴隷制の下で生活し、奴隷制と戦った人々をできるだけ歴史に近い形で表現することだ。私たちはこれがこの話題を扱う上でもっとも敬意ある方法であり、Victoria 3が志向するゲームにもっとも忠実な方法だと確信している。#15 奴隷制より
19世紀のすべての人々を扱うゲームである限り、必ず奴隷の身分が登場する。奴隷のPOPは他と違って、働く場所を選んだり、奴隷であることを自発的にやめることもできない。
奴隷の雇用方法はほかの職業と少し異なる。例えばある綿花プランテーションに4000人の作業員を雇用する枠があるとき、このプランテーションは1000人の作業人と3000人の奴隷でも、4000人の作業人と0人の奴隷でも、4000人を上限とする二者のあらゆる組み合わせで雇用できる。一般的に言って、建造物は作業人より奴隷を雇用することを好む。
また奴隷は、利用できるあらゆる手段で抵抗しようとする。奴隷POPは次々と急進化し、騒乱(turmoil)を高め、奴隷廃止論者とともに奴隷廃止法を通す政治運動に参加する。
Victoria 3のPopは常により高い社会階層に上がろうとするわけではなく、貴族が常に事務員と比べて高い収入や商品消費のニーズを持つわけでもない。こうしたことはすべて市場の需給で決まる。事務員を続けるより高い収入が得られるのであれば、資格のある事務員は喜んで利用可能な土地で貴族になるし、これによる収入の増加で徐々に彼らの富と消費需要は増加する。#13 生活水準より
生活水準(Standard of Living)はPOPの豊かさの絶対的な指標である。1から99までのスコアを持つが、実際のところ99に到達することはほぼ不可能である。生活水準は、おもにPOPのもつ富によって規定され、生活水準はPOPの出生率と死亡率、それから政府への忠誠度(loyalty)に影響を与える。
POPのもつ富は、週次の収入によって増加し、商品への支出と税によって減少する。収入が支出を超過している場合、POPは富を蓄積していき、閾値に達すると次の生活水準へと上昇する。また富をもつことは、多くの国家においてそのPOPがより大きな政治力を持つことにつながる。
富の水準は、POPがどのような商品をどの程度消費するかを決定する。POPは富に応じたニーズを持っており、ニーズを満たすために商品を手に入れようとする。1つのニーズは複数の商品の組み合わせで満たされる場合もある。例えば、穀物を必要とするPOPは基本的に価格にかかわらず必要量を確保しようとするため、居住地の穀物価格が上昇すると支出もあがってしまう。ただし魚や食料品(grocery)などほかの商品で代用できる可能性もある。
(開発日記では「富のレベル」と「生活水準のレベル」の両方が書かれているが、どのように違うのかはよくわからない)
包摂的で差別のない社会は時間経過で宗教的に均質になることはないし、抑圧的で外国人嫌いの国家は文化的マイノリティを統合するために資源を投入してただ待っているだけで彼らを同化できるということはない。文化については現在でも将来にも、受け入れるか、厳しく対処するかのどちらかである必要がある。今あらゆる信仰を受け入れているということは、将来これを撤回するときに問題になる。異質なPopに対する万能の解決策はない。#47 改宗と同化より
POPはみな固有の文化と宗教を持っている。文化や宗教に質的な優劣はないが、国家の主要文化や国教、執着とタブーによって彼らの待遇は変わりうる。
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何らかの要因で文化は執着(Obsession)を、宗教はタブー(Taboos)を持つ可能性がある。例えば、漢文化はアヘンへの執着を持った状態で始まる、イスラム教は酒類をタブーとしている、などである。
執着を持っている文化では、その文化のPOPがニーズの中で優先的にある商品を入手しようとする。アヘンへの執着を持っている場合、嗜好品のニーズをみたすために酒やタバコよりもアヘンを購入しようとする。
一方宗教のもつタブーは、ある商品への支出を大きく減少させる効果がある。これは執着と逆のはたらきを示し、ムスリムのPOPは酒よりもタバコやアヘンを購入する。
POPの文化や宗教は、国家によって差別の理由となりうる。ある文化や宗教が差別されるかどうかは、その国家の法律によって決まる。市民権法(Citizenship laws)はどの文化のPOPが差別されるかを決定し、「宗教と国家」法(Church and State laws)は自国で受け入れられる宗教を決定する。
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差別されているPOPは、
政治活動を阻み、プレイヤーの意図に反対する運動を抑制する手段のひとつは、自国のPopの生活水準を上げることだ。しかし、プレイヤーがある時点で繁栄をもたらした(結果として体制派が大きく増えた)からといって、誰もが永遠にプレイヤーの計画に乗ってくれるわけではない。#14 政治運動より
一般的に、Popは生活水準が低く雇用機会に恵まれないステートから生活水準が高く仕事があるステートに移動する。利用可能な土地に対して人口が少ないステートは経済的移民を特に惹きつける。#17 移民より